正弦波+500Whクラスのポータブル電源を20,000円で自作する
カテゴリ:車中泊グッズ
登録日:2020年3月14日|最終更新日:2024月09月20日
車中泊やキャンプなどのアウトドアを楽しむ方は、ポータブル電源を所持されている方も多いと思います。
私も小型のモバイルバッテリーや、150Whの小型ポータブル電源suaoki S270を活用していますが、夏季はまだしも、冬季の暖をとる用途としてはやはり力不足です。
一念発起というほどでもありませんが、20,000円以内で正弦波、300W出力、540Whのポータブル電源を自作しましたのでご紹介します。
お願い
バッテリーは、使い方や使用環境を誤ると短絡(ショート)や爆発などの危険性があります。
私は以下の構成で利用していますが、安全を保障するものではありません。あくまでもご自身の責任により制作してください。
不安がある場合は、市販のポータブル電源を購入されることをおすすめいたします。
目次
市販のポータブル電源のスペック
最近はポータブル電源の大容量化が進み、500Whは当たり前、1,000Wh以上の大型の電源も市販されています。
ただ、500Whクラスの電源は5万円前後の価格帯が多いです。
500Whクラス主なポータブル電源価格表
下の表はスマートフォンでご覧の場合左右にスクロールできます。
商品名 | 容量 | 出力規格 | 参考価格 |
---|---|---|---|
Smart Tap PowerArQ2 | 500Wh | 正弦波 AC出力:300W | 59,800円 |
suaoki G500 | 500Wh | 正弦波 AC出力:300W | 59,880円 |
cheero Energy Carry | 500Wh | 正弦波 AC出力:300W | 54,800円 |
500Whクラスの電源はおおよそ正弦波、AC出力が300Wまでの商品が多いです。
電子レンジやヒーターなどの大きな電力を必要とする機器の仕様は想定していないが、スマホ・PCの充電や小型の扇風機、電気毛布などの50W程度以下の機器であれば充分に利用できます。
車中泊やアウトドアには適した容量といえますね。
ただ、私のような庶民にはいくら便利でも50,000円以上という価格はやはり気軽に買える金額ではありません。
機器を揃えることも楽しいですが、旅先で名物料理を食べたり、良い温泉に入ることにお金を使いたいなあと思ってしまいます。
また、バッテリー、インバーター、チャージコントローラーなどが1つのパッケージになっている商品は便利ではありますが、バッテリーが弱ってきたり、コネクタが曲がってしまったりした場合に、基本的には保証期間を過ぎたら修理(廃棄)するしかありません。
必要なパーツを自分で集めて、自作しておけば故障などの修理やパーツの差し替え、バッテリー容量の変更も容易にできます。
必要な機能
市販のポータブル電源を参考に必要な機能をまとめると
- 電気を貯めておく機能
- 500Wh以上のバッテリー
- バッテリーのDC12VをAC100Vに変換する機能
- 正弦波インバーター
- バッテリーを充電する機能
- バッテリー充電器
の3つの機能が必須です。
ソーラーパネルから充電できるチャージコントローラーの機能のあるポータブル電源もありますが、今回は1泊~2泊程度を想定して、自宅でフル充電して持ち出し使い切るといった用途で考えています。
そのため、ソーラーチャージコントローラーは今回は購入しません。
ただ、自作ですので、必要に応じて後日追加も検討しています。
最近は災害も多いので、自宅で災害用に100W程度のソーラーパネルとチャージコントローラーを用意しておくと安心です。
バッテリー選び
最近の市販のポータブル電源は、リチウムイオン電池と呼ばれるスマートフォンなどにも使われる電池が使われており「軽い」「質量比の容量が大きい」という特性がありますが、「高価」です。
昔からある鉛蓄電池は、「重い」「質量比の容量が小さい」ですが、「安価」です。
リチウムイオン電池を使った市販のポータブル電源は500Whで5~6kg程度の商品が多いですが、鉛蓄電池は10~12kgほどの重量があります。
入手の容易さ、価格の安さ、10kg程度であれば車に持ち込むことに問題はありませんので、鉛蓄電池を選択しました。
鉛蓄電池の中でもシールドバッテリー(メンテナンスフリー)と呼ばれる完全密閉型のバッテリーは、使用中でもバッテリー液が減らず、液の補充も必要ありません。
amazonでシールドバッテリーで検索するといくつか候補がでてきますが、台湾のバッテリーメーカーLONG社が製造しているバッテリーが容量も豊富で、かなり広まっている製品で安全性に信頼があり、安価です。
LONG 密閉型バッテリーWP45-12(12V45Ah)
LONGのバッテリーの中でも、12V45Ahのバッテリーがおおよそ540Whの容量があり丁度良いです。もう少し大きな容量の12V50Ahの製品も選択肢としていいと思います。
ちなみにこの容量のバッテリーはセニアカーや電動車いすに使われることが多いようです。
ということで今回はLONGの12V45Ahの密閉型バッテリー、WP45-12を採用しました。
何度も充放電可能ですが、放電(電源利用の度合い)によって繰り返しの回数が異なります。
このバッテリーの充放電可能な回数の目安は以下の通りです。
- 50%放電後に満充電
- 約500回
- 80%放電後に満充電
- 約225回
- 100%放電後に満充電
- 約200回
100%使い切った状態でも充電可能ですが、バッテリーの寿命は短くなります。
それでも200回程度は利用可能ですので、数年は利用できる想定です。
ちなみに計算上はおよそ12V45Ahで540Whほどですが、実際はDCからACへの変換時のロスもあり80%程度が利用可能な容量といえます。
従って432Whほどが上限と考えるのがベターです。
また、使用時の温度にも気を付ける必要があります。
運用温度範囲
- 充電時
- 0℃~40℃
- 放電時
- -15℃~50℃
- 保管時
- -15℃~40℃
特に保管時に40℃を超えると思わぬ事故になる場合があります。
夏季に高温の車内に放置しないように注意しましょう。
インバーター選び
バッテリーのDC12VをAC100Vに変換し、一般的な家電を利用できるようにする機器です。
選択のポイントは
1.正弦波 or 矩形波(疑似正弦波)
2.定格出力の大きさ
の2つです。
正弦波 or 矩形波
正弦波と矩形波の違いは、様々なWebサイトで説明されているので、「正弦波 矩形波 違い」などで検索してみてください。
ざっくり説明すると、正弦波はほぼ自宅のACコンセントと同じ様々な機器が使えますが、矩形波は一部のテレビや炊飯器、電気毛布、電子レンジ、電気ポット、医療機器など緻密な制御を必要とする機器が使用できない場合があります。
車中泊、アウトドア前提では、電気毛布や扇風機、場合によっては炊飯器が影響があります。
電子レンジは大きな電流を必要としますので、今回の自作ポータブル電源では対応不可です。
正弦波のインバーターは矩形波に比べて高価ですが、定格出力の小さなものであれば比較的安価なものもあるので、正弦波を選んだ方が後々幸せかと思います。
定格出力の大きさ
定格出力ですが、どの程度の電力消費の機器まで利用できるか、という目安となります。
スマートフォンは10W以下、ノートパソコンが20W~50W程度、電気毛布が30W~50W、扇風機も数W~50Wほどです。
いわゆる電気ヒーターは300W以上の製品が多く、また、電子レンジも1000W以上と大きな電力を消費します。
出力の大きなインバーターほど非常に高価です。また、500Whクラスのバッテリーに1,000W出力のインバーターは不要です。
市販のポータブル電源と同様に300W程度のインバーターが適しています。
BESTEK製MRZ3010HU
正弦波で出力300Wのインバーターはいくつか候補がありますが、私が購入検討時にちょうどセールをやっていたBESTEK製のMRZ3010HUという機種を購入しました。
2口のACコンセントとUSBポートも2つ備えています。
端子がシガーソケットなので、ポータブル電源用として使用しない場合は、シガーソケットに装着して普段使いにも便利です。
充電器選び
バッテリーは、開封した状態で約80%程度充電されていましたが、自宅のコンセント(AC電源)で、バッテリーを充電できる機器が必要です。
DC12Vの容量45Ahのバッテリーを充電できるバッテリー充電器は、様々販売されています。
基本的に適合する製品であればどれでも良いのですが、今後、車のバッテリー上がりにも対応できるように少し対応する容量の大きいメルテック製SC-1200を購入しました。
メルテック製SC-1200
SC-1200は適合バッテリー電圧がDC12V(開放型・密閉型)鉛バッテリー、適合バッテリー容量は6Ah~140Ahです。
バッテリーの状態を自動で判断して、適切な電流で自動充電します。
重量は軽いですが、そこそこのサイズがあるのが難点です。
もう少し手軽(小型)な充電器としてセルスター製のDRC-300やメルテックのPC-100も候補でしたが、値段もそれほど変わらず出力電流の大きいSC-1200を採用しました。
シールドバッテリーは急速な充電はNGとのことですので、出力がDC12V/4A程度の充電器でも充電時間は大きく変わらないかと思います。この辺りは、お持ちの車の非常時に対応させるかどうかで判断されるとよいです。
バッテリー・インバーター間のケーブル
バッテリーは+と-の端子がむき出しですので、インバーターと接続するケーブルが必要です。
片側がバッテリーに接続する丸型の端子、もう片側がインバーターと接続するシガーソケットのメスのケーブルを選びます。
ケーブルもamazonで探しました。
30Aのヒューズ付で1.8mのケーブル長、およそ400W程度までのインバーターに適したケーブルです。
ケーブルも太く、予備のヒューズも2つ付属し、作りもしっかりしていて中々良いケーブルだと思います。
ただ、丸型端子のサイズが10mmのため、今回のバッテリー(6mm)には少し大きいですが、ねじで締めてしまえば、まずまず気になりません。
バッテリーボックス
車に積む際に、バッテリーを裸のまま置いておくのもどうかな、という気もしたのでバッテリーボックスという入れ物も購入しました。
NOCO Snap-Top Battery BoxesのM24サイズというものです。
内寸はおおよそ280mm(たて)×190mm(よこ)×240mm(高さ)で、実際にWP45-12を収めてみるとこのような感じです。
そこそこ遊びがありますが、ケーブルの収納を考えると良い具合かなと思います。
各機器の接続
バッテリー充電時
- 1.バッテリー充電クリップを+端子、-端子の順にバッテリーに接続する。
- 2.充電器の電源プラグをコンセントに接続する。
接続すると自動で充電が始まります。ほぼ放電した(使い切った)状態から6~7時間程度で充電が完了しました。
充電中は、充電器の正面向かって左のファンがかなり「ゴー」という音で回ります。そばに置いて眠れないレベルなので、車内で夜間に充電はかなり厳しいです。
使用時
- 1.バッテリーにケーブルを接続する。
- 2.インバーターをケーブルに接続する。
- 3.インバーターの電源をONにする。
念のため、バッテリーの端子部分がむき出しのため、絶縁のテープで覆っておきます。ホームセンターで100円程度で販売しています。
電気毛布使用時の電力消費
車中泊時に足元に敷いているコイズミ製のKDS-4061という電気毛布(掛敷)130×80cmを実際に使用してみました。
最初は温めるために中でも45W程度の電力を消費しますが、一度温まると0W~40W程度でON/OFFを繰り返します。布団の中で熱が逃げにくい状態であれば、中の強さで15時間程度(平均20W~30W)は使用できる計算です。
強で6時間程度使用しましたが、暑くて起きてしまうほどでした。
1晩は十分に使用でき、節約しながらであれば2晩もなんとか使用可能です。
経験上、明け方の方が寒さを強く感じるので、明け方に電力を残しておく快適ですね。
購入にかかった金額
購入時の価格を一覧にしてみました。
下の表はスマートフォンでご覧の場合左右にスクロールできます。
バッテリー | LONG WP45-12 | 9,411円 |
---|---|---|
バッテリー充電器 | メルテック SC-1200 | 4,358円 |
正弦波インバーター | BESTEK MRZ3010HU | 4,544円 |
接続用ケーブル | ヒューズ付き シガーソケット延長ケーブル | 1,180円 |
合計:19,493円(税込)
ぎりぎり20,000円におさまりました。
機能とは関係ないので、外しておきましたがNOCO(ノコ)Snap-Top Battery Boxesは2,112円で購入しました。2019年末に購入したのですが、最近は少し全体的に値上がりしているようです。
それでも20,000円代前半ですべて揃います。
今後の改造
実際に使用してみると、どの程度バッテリー残量があるのかが分からないのでバッテリーモニターやチャージコントローラーをつけて表示できるようにすると便利ですね。
このような機能の追加が自由にできるのが自作の良いところですね。